あなたは一人じゃない - (上毛新聞オピニオン21)

 私たちが不登校や施設児童への支援を展開する中で心掛けていることがあります。それは「分かったつもりにならないこと」。例えば不登校支援を続けていく中で、私たち自身も不登校についての理解が深まっていきます。そして「この子は~だから、…な関わりがいいな」と考えるようになることがあります。しかし、この思考は失敗することが少なくありません。

 なぜなら、目の前にいる子どもと私たちは経験も環境も全て異なるからです。私たちにできることは相手を分かろうとすることだけであると自覚することがいい支援につながると考えています。ただ、こちらが分かろうとする姿勢を続けていても、時間がかかることもあります。こんな時どうすればいいのか?一つの方法として、似たような経験や環境の方に関わっていただくことが有効であると考えています。

 皆さんも経験があるかもしれませんが、同じような経験をした人と話をすることってとても楽しくありませんか?

 例えば同じスポーツをしていた、同じブランドが好きなどなど…。そんな仮説をもとに2016年より毎年実施しているイベントがあります。今年も8月9日に開催した「SAME BOAT」です。SAME BOATは英語の口語表現で「同じ状況」という意味です。

 このイベントは参加者を限定していて、“不登校の親子”が対象になります。同じ悩みや不安を抱えているからこそ、自然に打ち解けることができたり、分かり合えたりすることができ、そこに交流が生まれ、不登校の親子が抱える孤立を解消することにつながっていくー。この仮説は見事的中いたしました。

 今まで120組以上の親子が参加し、アンケートで「満足した」と回答した方が驚異の100%。もちろん当事者間の交流だけで実現できるものではありません。このイベントを一緒に作り上げる多くの仲間がいるからこそです。

 このような限られたグループの中でつながることはその人の視野や考えを狭めることにつながると心配される方もいるかもしれません。しかし、思い悩む方々にとっては「当事者間の交流だからこそ安心することができます。そして明日への一歩を後押しすることができるはずと信じています。

 「1歩目を踏み出す価値を体感し、世界は広いと、自分だけではないんだと感じてもらいたい。その結果視野や考えもきっと広がる」。私たちはそう思います。

 来年度以降も必要な方がいる限り、SAME BOATは継続していきます。まずは安心を。そのために当事者間の交流機会を。そして孤立を解消する。もうあなたは一人じゃない。一人だなんて言わせない。