君はヒーローになれる -(上毛新聞オピニオン21)

 僕はヒーローが好きです。でも最初から力があって才能がある...そんなヒーローはあまり好きではありません。その存在を認めてしまうと、個人的に努力することが無意味に感じてしまうからです。

 僕が思うヒーローの素質とは弱さを知り、その弱さを受け止めることができる力です。弱さを知っているからこそ、困り悩む人の気持ちを理解することができる。そして弱さを受け止めるからこそ、強くなろうと思い、努力をするのではないでしょうか。

 現実世界では弱さを受け止めることは簡単なことではありません。周囲からの視線も気になるし、自身のことを惨めに感じたくないため、弱い人ほど自身を強く見せることがしばしばあります。弱さを知り、弱さを認めることが自身を高めるためのスタートとなるはずです。

 僕たちは保護者からの虐待や生活困窮などを理由に児童養護施設に入所している児童を対象とした「フレーベン」という家庭教師型の個別学習支援サービスを実施しています。入所する児童は自身の能力や意思によらず、環境によって学習が遅れてしまう現状があります。その課題を解決するために、学習支援を希望する施設児童と学習支援をしたいボランティアをマッチングし、前橋市と高崎市で展開しています。

 この事業でまず僕たちが子どもとの関わりで大切にしていることが信頼関係をつくることです。学習支援を行うという事実よりも、まずは目の前にいる児童を受容し、信頼関係をつくることが重要であると思っています。

 なぜなら信頼関係がなければ、子どもたちは自分自身が勉強をできないこと、この問題がわからないことを素直に口に出せず、効果的な学習支援が実施できないからです。

 関係を構築することができれば、僕たちは学力向上のため全力で応援する態勢に入ることができます。努力はスタートさせることも難しいですが、主体的に継続することも難しいです。継続するためには圧倒的な情熱か、誰かに応援されることや期待されることが必要であると思います。信頼関係がある人に応援、期待されることで子どもたちは素直に「頑張ろう」と思えるのだと考えています。

 つまり自分自身で弱さを受け止めるためには、ある程度それを手助けしてくれる「フォロワー」が必要なのではないでしょうか。誰しもが自分だけでは変われないと思います。しかし一人でも自分の周りにフォロワーがいてくれれば、人は変わることができると思います。

 僕たちはワクワクしています。だって目の前には僕たちが支援することで日本の未来を支えるヒーローの素質を開花できるかもしれない、子どもたちがいるからです。僕たちは信じています。君たちはヒーローになれる、と。